090813 裁判員裁判二例め〜一例めとの対比

2件目の裁判員裁判、弁護の違いが量刑に影響:Yomiuri Online

さいたま地裁で開かれていた全国2件目の裁判員裁判で12日、判決があった。

先週の東京地裁での第1号事件では、過去の量刑の傾向を表す「量刑相場」より重めの判決が出たが、第2号事件では弁護人の主張がある程度受け入れられた。
3〜6日に東京地裁で行われた裁判員裁判では、近隣トラブルから女性を刺殺し、殺人罪に問われた被告に懲役15年(求刑・懲役16年)が言い渡された。判決は被害者の落ち度を強調した弁護側の主張を認めず、ベテラン裁判官が「突発的な殺人事件では10年強を中心に考える」と話すように、従来の相場よりも厳しい結果だったといえる。
たしかに,1例めの事件は一般的な実務家が考えるいわゆる量刑相場より重めだったと思われます。
一方、さいたま地裁では殺人未遂罪に問われた被告に、検察側が懲役6年を求刑、判決は懲役4年6月だった。判決は被害者が犯行のきっかけを作った面があることや、被告の自首など、弁護側が強調した「被告に有利な事情」に目配りしており、別の刑事裁判官は、「この事件をプロの裁判官だけでやれば、懲役5年を下回ることはなかったのでは」との見方を示した。
裁判員が加わった場合の量刑については、「被害者の生の声に動かされて重くなる場合もあれば、被告の境遇に同情して軽くなる場合もある」(ベテラン裁判官)との予測があった。

被害者の遺族も参加した東京の裁判で、弁護側は「被害者が犯行のきっかけを作った」と主張したが、法廷ではこれに沿う証言をあまり引き出せなかった。最終弁論では、検察側の懲役16年の求刑に対し、「不当に重い」と言うのみだった。裁判員を務めた1人は後日、記者会見で検察側の求刑や被害者の代理人の意見が参考になったとする一方、「弁護人が具体的に何年が妥当と思っているのか知りたかった」と指摘した。
たしかに,裁判員からすると,量刑の目安を出してもらえた方がいいでしょう。その点,弁護側の活動は足りない部分があったと思います。

ただ,これは,実務で量刑の客観化・標準化をすすめていなかったことが大きな原因だと思われます。一概に弁護人の責任だとも言えません。
一方、第2号事件の弁護人は、この裁判員経験者の感想も参考にして主張を組み立てたという。罪状認否で被告が起訴事実を認めると、弁護人が「自首が成立しますので、執行猶予を求めます」と、すかさず付け加えた。公判の冒頭に弁護人が刑の重さまで口にするのは異例のことだった。

さらに最終弁論では、最高裁の量刑検索システムを利用した上で、過去の同種事件の量刑分布を示す棒グラフをモニターに映し出し、「懲役6年にグラフの山はあるが、執行猶予の部分にも山がある」と述べた。

一方、検察側も同じシステムを利用したが、「執行猶予がついているのは、被害者が被告の親族で、被告を許しているときだ」などとして、実刑を求めた。

量刑検索システムを土台に、検察官と弁護士が具体的な量刑の主張を展開した今回の第2号事件について、ある刑事裁判官は「データベースの検索結果という同じ客観データを使えば、かみ合った議論を引き出すことができ、非常に有効だ」と指摘している。
このデータベースには実は問題があります。被害者の人数について区別せずにデータをまとめています。一人殺害した件も,二人以上殺害した件も,データ上では判別できません。愛知県弁護士会などが取り組んでいる,量刑データベース作成作業に期待が寄せられます。