090519 痴漢冤罪 被告人が自白し,被害者の供述がある事案で,被害者の供述の信用性を否定。

読売新聞から。
Yomiuri Online:路上で痴漢、逆転無罪…名古屋高裁「調書は信用できない」

三重県熊野市の路上で痴漢をしたとして、県迷惑防止条例違反の罪に問われた同市、製菓作業員の男性(23)に対する控訴審判決が19日、名古屋高裁であった。
非常に興味深い判決です。被害者の供述と,被告人の捜査段階の自白のみでは,その信用性に疑義があるのなら*1,ただちに有罪にできない,というのは極めて真っ当な認定です。ただ,肝心な所が記事には記載されていません。
田中亮一裁判長は「捜査段階で容疑を認めた被告の供述調書は信用できない」と述べ、罰金30万円とした1審・熊野簡裁判決を破棄し、男性に無罪を言い渡した。

男性は2007年5月2日午後8時頃、同市内の路上で、女子高校生(当時16歳)の尻を触ったことを一度は認めたため、同12月に略式起訴された。その後、「犯行現場にはいなかった」として正式裁判を申し立てたが、同簡裁は08年12月、「被告の供述調書は信用できる」として有罪判決を言い渡していた。

田中裁判長は「被告の供述調書は、被害者の後をつけて犯行に及んだ状況が被害者の供述と食い違い、信用できない。被害に遭ったことは間違いないが、被害者の供述からは被告人が犯人と断定できない」とした。

名古屋高検の田内正宏次席検事は「判決内容を慎重に検討の上、適切に対応したい」とのコメントを出した。
(2009年5月19日21時19分 読売新聞)
被告人は犯行現場にいなかったのか,被害者が他の人と被告人を取り違えたのか,いまひとつわかりません。

*1:信用性に疑義が生じる,という意味では,先般の防衛医大教授の事案に通じるかもしれません。ただし,防衛医大教授の件は,一貫して無罪を主張していたとされており,その点が異なります。