080331池田信夫氏:消費者行政が消費者の敵になるとき(2)

池田信夫blog:消費者行政が消費者の敵になるとき
さらに,上記の記事の続きです。引用したURLは上記のものと同じものです。

企業の売り上げは税金のようにコンスタントに入ってくるものではなく、経常利益は黒字でも一時的に手形が落とせないといったことは、中小企業にはよくある。こういう場合、月2%ぐらいの金利つなぎ資金を貸す業者は必要なのだ。
教科書説例的な例示としては否定はしません。しかし,中小企業相手の一部商工ローンは,”中小企業のための月利2%くらいのくらいの金利つなぎ資金”なんてかわいいものではありません。
 親族から公務員や大企業勤務の人間を保証人とし,元金をジャブジャブ貸し付けて,分割返済の際に利払いをさせます。予定通り破たんしたら,元金を保証人から回収させるのです。

 一部商工ローンのひとつの典型的なパターンの貸付として,一定額を貸付け,半年から2年位は毎月利息のみの支払い,半年から2年後にある弁済期に元金を一括で返済させる方式です。それまでに破たんしていなければ,また借り換えをさせればいいわけです。当然,まだまだ借主に余力がありそうなら,貸付金額を増やします。当然毎月返済する利息も増えますが。
 仮に,500万円の貸付を受け,毎月約12万6000円(年利29.2%を12で割って計算。当然利息だけです)をコンスタントに返済できる中小零細企業がどこにいますか。さらに500万円の元金を返済しなければならないときに,その資金をどこから調達するのでしょうか。池田氏サラ金やほかの商工ローンから借り入れてまかなえ,と仰るかもしれませんが,それこそ多重債務の原因です。

 実際に一部商工ローンサラ金の取引履歴に目を通すと,貸付額がどんどん増えていきます。サラ金も一部商工ローンも,「貸し付けたあとに搾り取るだけ搾り取る,それもなるべく長期間にわたって」というのが利益を出すためのモデルなのです。池田氏が考えているみたいにいい人ばかりなのなら,世の中幸せなのですが。

繰り返しになりますが,池田先生は

彼らはキャッシュフロー(入金と出金の流れ)の概念を理解していないのだ。
と仰られました。
しかし,理解していないのではなく,そこに付け込み生活と事業を破たんさせる一部貸金業者を問題視しているわけです。とりあえず利息制限法の範囲で無担保貸付をすることは問題視していないのですよ。利息制限法すら高すぎる,という議論はありますが,それは別の議論です。

なお,ドイツやフランスの消費者向けローンは年利6〜7%と聞き及んでいます。仮にこれが事実なら,ドイツやフランスは異常な国家なのでしょうか?それとも,アメリカみたいに年間140万人が破産するような国家が異常なのでしょうか?僕は,今回の金利規制は取りうべき政策選択のひとつとして,十分合理性を有するものだと思っています。