080311アニメ・漫画・ゲームも「準児童ポルノ」として違法化訴えるキャンペーン MSとヤフーが賛同

【ITメディアニュース】アニメ・漫画・ゲームも「準児童ポルノ」として違法化訴えるキャンペーン MSとヤフーが賛同  魚拓

児童ポルノ防止法の改正で単純所持を違法化する動きが加速しています。しかし,単純所持の犯罪化は非常に問題をはらんでいます。
元検察官の弁護士である落合洋一先生も指摘しておいでです。いくつかある問題点のうちのひとつは,落合先生ご指摘のとおり,捜査機関による濫用のおそれがたぶんにある,ということでしょう。

さらに,構成要件がどうしても不明確にならざるを得ない問題があります。自分の子どもや親族,子どもの友達などが写った写真を所持している場合,それらを「ポルノ」からどう外すのでしょうか。現在,「わいせつ」性の判断について,最高裁判所は相当程度解釈で絞りをかけています。これは,構成要件があまりに広範囲になってしまいかねない問題を「わいせつ」という単語が孕んでいるからなのですが,同時に構成要件が不明確であることを露呈しています。それとパラレルな問題が生じるでしょう。

法律的な点については上記の点を指摘できると思います。もうちょっと広く考えて,政策としての適否を考えると,さらに次の2点が指摘できます。

まず,立法事実自体が存在しないのではないか,という問題です。次に,曲がりなりにもコンテンツ立国としてソフトウェアに力を入れようとしているときに,その力をそぐようなことをして良いのか,という問題です。

前者については,児童ポルノの単純所持が,具体的にどのような危険をはらむのか,という点についてきちんと論証されなければなりません。よく言われるように,「日本が児童ポルノ大国である」という意見が存在します。しかし,この見解の大本になった文献に関して,誤訳であるという指摘が存在します。また,IWFというイギリスのウェブ監視団体のウェブサイトでは,日本はアメリカ,ロシア,スペインの次の割合でコンテンツを有しているとのことですが,その割合は1位のアメリカのわずか10分の1の5パーセントです。これをもって児童ポルノ大国というには躊躇があります。また,そもそも同団体がどのような範囲で何を児童ポルノ(原文では"child abuse")と判断したのか明確ではありません。少なくとも規制する側はこれより優れたデータを出す必要があります。なお,欧米人からすると東洋人はどうしても幼く見えるので,そもそもそういったバイアスを除去できているのでしょうか,という疑問もあります。(※なお,IWFについては,ここで知りました)

後者についてです。表現行為にはどうしても社会的にはきわどいとされるものがつき物です。しかし,ある一定内容の表現を規制するのであれば,その表現方法は死ぬでしょう。韓国において漫画に対して強い規制が敷かれたあと,韓国漫画は勢いを失ったと聞きます。

様々な問題を孕む児童ポルノ防止法改正について,冷静な議論がされることを求めます。